退職給付会計(基本理解・手ならし)
ネットスクール予想(第171回・会計学 第1問)相当の設定を使い、「仕訳を書かずにT字勘定で見積 → 数理差異を出す → P/LとB/Sに写す」の流れを最短で確認します。画像は使わず、すべて文字で再現しています。
前提(JGAAP・試験用表現)
本稿では、試験の指示に合わせて貸借対照表科目を「退職給付引当金」として扱います。
(=退職給付債務 − 年金資産 − 未認識過去勤務費用 − 未認識数理差異 の純額が負債側に載る想定)
本稿では、試験の指示に合わせて貸借対照表科目を「退職給付引当金」として扱います。
(=退職給付債務 − 年金資産 − 未認識過去勤務費用 − 未認識数理差異 の純額が負債側に載る想定)
与えられたデータ
項目 | 数値 | メモ |
---|---|---|
期首(X2 期末)の退職給付債務 | 44,500 千円 | |
期首(X2 期末)の年金資産 | 12,000 千円 | |
期首 未認識過去勤務費用 | 4,000 千円 | X1/4/1 改定発生。10年定額・発生年度から償却 |
期首 未認識数理差異 | 180 千円 | X2 に発生(年金資産の実績<期待)・10年定額 |
当期(X3)の勤務費用 | 6,150 千円 | |
割引率(利息費用) | 2% | 利息費用=期首PBO×2% |
長期期待運用収益率 | 3% | 期待収益=期首資産×3% |
当期 給付支払(一時金) | 1,140 千円 | 会社から現金給付 |
当期 給付支払(年金) | 410 千円 | 基金から給付 |
当期 掛金拠出 | 3,000 千円 | 会社→基金 |
当期末 退職給付債務(実績) | 51,390 千円 | |
当期末 年金資産(公正価値) | 14,450 千円 |
① 期首の退職給付引当金(問1)
期首の退職給付引当金=
退職給付債務 44,500
− 年金資産 12,000
− 未認識過去勤務費用 4,000
− 未認識数理差異 180
= 28,320(千円)
■解答(問1):28,320 千円
② 退職給付債務(PBO)の見積(問2)
給付は「一時金」と「年金」いずれも PBO を減額します。
[退職給付債務 T勘定(見積)]
期首残 44,500
+勤務費用 6,150
+利息費用 890 (=44,500×2%)
−給付支払(年金) 410
−給付支払(一時金)1,140
─────────────────
見積期末残 49,990(千円)
実績期末PBOは 51,390 千円なので、数理差異(PBO側)= 51,390 − 49,990 = 1,400(千円・借方差異)
■解答(問2):49,990 千円
③ 年金資産の見積(問3)
[年金資産 T勘定(見積)]
期首残 12,000
+期待運用収益 360 (=12,000×3%)
+掛金拠出 3,000
−給付支払(年金) 410
─────────────────
見積期末残 14,950(千円)
実績期末資産は 14,450 千円なので、数理差異(資産側)= 14,450 − 14,950 = △500(千円・借方差異)
(期待より資産が減った=損)
■解答(問3):14,950 千円
④ 当期の退職給付費用(P/L)(問4)
退職給付費用は下記の合算です。
勤務費用
6,150
利息費用(44,500×2%)
+ 890
期待運用収益(12,000×3%)
− 360
過去勤務費用の償却
+ 500
数理差異の償却
+ 210
数理差異の償却内訳:
・X2発生分(期首未認識180)は原始額200の10年定額 → 当期 20 認識(※発生年度から償却)
・X3新発生分(PBO 1,400 + 資産 500 = 1,900)は当期から10年定額 → 当期 190 認識
合計 20 + 190 = 210
退職給付費用 = 6,150 + 890 − 360 + 500 + 210 = 7,390(千円)
■解答(問4):7,390 千円
※メモ上に 7,380 とある場合は、数理差異償却(20+190)のどちらかで 10 千円の丸め差が出ている可能性があります。
期末B/S(問5)の整合性まで含めると 7,390 が一貫します。
期末B/S(問5)の整合性まで含めると 7,390 が一貫します。
⑤ 期末の退職給付引当金(B/S)(問5)
まず、期末の「未認識項目」を更新します。
- 未認識過去勤務費用:4,000 − 500 = 3,500
- 未認識数理差異:
・X2残 180 − 20 = 160
・X3新発生 1,900 − 190 = 1,710
合計 1,870
期末の退職給付引当金 =
退職給付債務(実績) 51,390
− 年金資産(実績) 14,450
− 未認識過去勤務費用 3,500
− 未認識数理差異 1,870
= 31,570(千円)
■解答(問5):31,570 千円
仕訳イメージ(参考:試験での思考補助)
本問はT勘定で十分解けますが、理解の補助として代表的な仕訳像を整理します。
当期の認識(代表例)
[費用認識]
退職給付費用 / 退職給付引当金 … 勤務費用・利息費用・償却(PSC・数理差異)
退職給付引当金 / 受取配当・期待運用収益等 … 期待運用収益(実務上は相殺表示のことも)
[キャッシュアウト]
退職給付引当金 / 現金預金 … 一時金の給付
退職給付引当金 / 年金資産 … 基金からの年金給付
年金資産 / 現金預金 … 掛金拠出
[数理差異の発生(期末調整)]
(未認識数理差異)/(退職給付引当金 or 年金資産) … 実績と見積差の整理(P/Lは定額償却分のみ)
※試験は「金額を出す」ことが目的。仕訳の書式は与件次第でOK。
まとめ(要点だけ)
- PBOと年金資産はT勘定の4本柱(期首・費用/期待収益・給付/拠出・期末)。
- 期末の実績 − 見積=数理差異。本問は「発生年度から10年定額」でP/Lに乗せる。
- B/Sの退職給付引当金= PBO − 資産 − 未認識PSC − 未認識数理差異。
以上をテンプレ化すれば、同類題は 「T勘定→差異→P/L/B/S」で最速クリアできます。