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【簿記1級】返品権付き販売の仕訳と計算(返金負債・返品資産)

この記事は、簿記1級の返品権付き販売を「売上側」と「原価側」の二組に分けて解くためのメモです。返金負債・返品資産の計上、見積り変更、実際の返品、返品期限の到来までつなげて整理します。

元の学習メモでは「返品負債」と書いていた箇所がありますが、この記事では返金負債に統一します。返金負債は返すと見込まれる代金、返品資産は返金に応じて商品を回収する権利です。売価と原価を混ぜないのがポイントです。

0. まず、販売額と商品原価を別々に分ける

販売額の整理
販売対価=返品されないと見込む売上+返金負債

商品原価の整理(回収費用・価値低下なしの例)
販売した商品の原価=売上原価+返品資産

返品を見込む分まで、いったん全部売上にして期末にだけ取り消すとは限りません。返品権付き販売では、見込みを販売時の収益計上に反映します。また、返金負債と返品資産は、互いに相殺して一つの差額にしません。

参考:収益認識に関する会計基準の適用指針・84〜89項。

1. 販売時は、売上・返金負債・原価・返品資産をセットで計算する

次の独自例で考えます。金額は円、税金は考慮しません。商品は顧客へ移転済みで、返品条件の下でも代金全額について無条件の請求権があるものとします。

  • 掛販売の対価:20,000円
  • 販売した商品の原価:12,000円(原価率60%)
  • 返品に伴う返金見込み:2,000円
  • 返品商品の回収費用や価値低下はない

売上側:対価20,000円を分ける

返金負債=2,000円
売上=20,000-2,000=18,000円

(借)売掛金20,000
(貸)売上18,000
(貸)返金負債2,000

売掛金は20,000円です。この例では対価全額に対する請求権があるため、返品見込みだけを理由に売掛金を18,000円へ減らしません。顧客へまだ商品を移転していない未検収の取引とは、前提が違います。

原価側:商品原価12,000円を分ける

返品資産=返金見込み2,000×原価率60%=1,200円
売上原価=12,000-1,200=10,800円

(借)売上原価10,800
(借)返品資産1,200
(貸)商品12,000

返品資産は、返金見込み2,000円そのものではありません。上の条件では、回収する商品の原価1,200円です。返金負債と返品資産の金額が同じになると考えないようにします。

全額の売上・原価を先に計上していた場合

前T/Bに売上20,000円と売上原価12,000円がすでに入っているなら、追加すべき仕訳は返品見込みの修正分です。上の販売時仕訳をもう一度計上しません。

(借)売上  2,000 /(貸)返金負債2,000
(借)返品資産1,200 /(貸)売上原価1,200

これで、売上18,000円、売上原価10,800円になります。元メモの「売上を減らす」「その原価分を返品資産へ」という整理は、この二つの流れとして覚えると追いやすくなります。

2. 返品見積りが変わったら、必要額と帳簿残高の差を調整する

販売後、まだ返品は発生していない段階で、返金見込みを2,000円から3,000円へ変更したとします。商品の原価率60%と、回収費用・価値低下なしの条件は変わりません。

必要な返金負債=3,000円
現在の返金負債=2,000円
追加する返金負債=1,000円

必要な返品資産=3,000×60%=1,800円
現在の返品資産=1,200円
追加する返品資産=600円
追加の修正仕訳
(借)売上  1,000 /(貸)返金負債1,000
(借)返品資産 600 /(貸)売上原価600

修正後は、売上17,000円、返金負債3,000円、売上原価10,200円、返品資産1,800円です。変更後の返金見込み3,000円を、全額追加しないようにします。

すでに返品と返金が発生している場合は、それによる残高の減少も反映してから、期末に必要な残高と比べます。「販売時の見込み額」だけを引くと、現在の帳簿残高と合わなくなることがあります。

3. 実際の返品は、計上してある負債・資産を取り崩す

上の見積り変更後、掛代金20,000円は全額回収済みになったとします。その後、売価2,500円分が実際に返品され、同額を現金で返金しました。回収した商品の原価は1,500円で、損傷等はありません。

代金を返金する
(借)返金負債2,500 /(貸)現金2,500

商品を回収する
(借)商品1,500 /(貸)返品資産1,500

すでに返品を見込んで売上を減らしていたので、その見込みに対応する実際の返品時には、返金負債を使います。売上も同じ額だけ減らすと、二重に減額することになります。商品の回収も、すでに計上した返品資産から商品への振替です。

この時点で、返金負債は500円、返品資産は300円残っています。これらは、まだ返品される可能性がある部分です。

返品期限が到来し、残りの返品がなかった場合

返金が不要となった分を収益にする
(借)返金負債500 /(貸)売上500

回収しないことが確定した分を原価にする
(借)売上原価300 /(貸)返品資産300

最終的な売上は17,500円、売上原価は10,500円です。実際に返品された商品を除いた金額とも一致します。

売上:20,000-実際の返金2,500=17,500
売上原価:12,000-回収商品の原価1,500=10,500
最終残高:返金負債0、返品資産0

4. 返品資産には、回収費用や価値低下の条件も反映する

ここまでは、返金見込み×原価率で返品資産を求められる単純な例でした。返品商品の回収に費用がかかる場合や、回収後の商品の価値が下がる場合は、それも考慮します。

別の例として、回収予定商品の従来の帳簿価額が1,200円、見積回収費用200円、回収後の価値低下100円なら、返品資産の測定額は次のように整理できます。

返品資産
=1,200-回収費用200-価値低下100
=900円

この場合、回収する権利の価額は1,200円のままではありません。返金負債は顧客に返す対価、返品資産は回収する商品に関する資産なので、回収費用があるから返金負債も同じだけ減るとは考えません。

5. 原価率は、返品見込みの調整前に確認する

元メモでは、返品の仕訳を作る前に、シンプルな原価BOXから原価率を求める点も注意事項になっていました。返品見込みを売上から控除した後の数字と、販売した商品全部の原価を組み合わせると、比率がずれるためです。

売上総利益率38%が売上高を分母とする率なら、原価率は62%です。利益率をそのまま返品額に掛けないようにします。また、前期販売分の返品商品は、当期販売分とは原価率が違うことがあります。どの販売分に対する返品かを分けて計算します。

前期分の返品処理が済んでいて、当期分の返品だけが未処理の問題もあります。「前期に売った商品」という理由だけで、前期からのすべての処理をやり直さないようにします。

6. 解答前のチェックリスト

  • □ 販売時の処理は済んでいるか、未処理か。
  • □ 売上側は売価、返品資産側は原価を使ったか。
  • □ 返金負債と返品資産を相殺していないか。
  • □ 見積り変更は必要額と現在の残高の差で処理したか。
  • □ 実際の返品で、売上・原価を二重に減らしていないか。
  • □ 返品期限到来後の残額を整理したか。
  • □ 回収費用・価値低下や、販売時期ごとの原価率を確認したか。

返品権付き販売は、返金負債のBOXと返品資産のBOXを並べて、同じ取引を売価と原価で追うと整理できます。販売時・見積り変更・実際の返品・期限到来を順番に置けば、どの残高を使うかが見えやすくなります。

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