委託販売や未着品が出てくる商品売買の問題は、一般の商品売買に全部まとめてしまうと、原価を二重に計上しやすくなります。
学習メモでは、一般販売と積送品、または未着品に分けて原価BOXを作り、最後に合計することをポイントにしていました。もう一つ大事なのが、残高試算表の「仕入」と「積送品」に、すでに何が含まれているかです。
0. 先に押さえる結論
- 受託者に送っただけでは、通常、委託者の売上にはならない。積送品として在庫を管理する。
- 一般販売と委託販売は原価BOXを分ける。
- 期末一括法では、期中の販売原価が積送品からまだ振り替えられていない。
- その都度法では、販売原価の振替がすでに行われている。仕入勘定に振り替える方式なら、その金額を一般販売の仕入から区別する。
- 未着品は、到着しているかだけでなく、自社に帰属する商品かを確認する。
ここでは委託者の帳簿を扱います。受託者の受託販売勘定や受取手数料と、委託者の積送品や売上を混ぜないようにします。
1. 在庫は「手許・積送・未着」を別々に見る
同じ自社の商品でも、保管場所や販売経路が違えば、使う勘定と資料の読み方が変わります。
| 区分 | 状態 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 手許商品 | 自社の店・倉庫などで保管 | 一般販売の仕入、期首商品、期末棚卸高 |
| 積送品 | 販売を委託して受託者へ送った自社商品 | 積送額、販売通知、販売原価、未販売残高 |
| 未着品 | 自社に帰属しているが、まだ到着していない商品 | 取得額、引取額、未到着残高、直接販売の有無 |
「倉庫にないから在庫ではない」と判断すると、積送品や未着品が抜けます。逆に、受託者から販売通知が来ている商品を、未販売の積送品に残すと在庫を過大にします。
2. 委託販売は、送付と販売を分ける
委託者が商品を受託者へ送っても、受託者がその商品を支配していない委託販売取引では、この時点で売上を認識しません。顧客への販売により収益認識の条件を満たしたときに、委託者の売上になります。
問題文では、販売計算書や売上通知によって、販売額、諸費用、送金額が分かることが多いです。まず、通知に書かれた売上総額と手取り額は違うことを確認します。
売上40,000円、販売手数料4,000円、入金36,000円の例
委託者が商品を支配して販売する本人に当たり、手数料を販売費として処理する設定です。消費税は省略します。
(借)現金 36,000
(借)支払販売手数料 4,000
(貸)積送品売上 40,000
科目名は問題の指定に合わせます。「積送品売上」ではなく「売上」を使う場合もあります。この例では、手取り36,000円をそのまま売上にせず、売上40,000円と手数料4,000円を分けています。
まだ送金されていなければ、借方の現金は売掛金など指定された債権科目になります。受託者からの通知にある発送費等も、費用なのか商品原価に含めるのか、指示を読みます。
3. 二つの原価BOXを作る
次の独自の例で整理します。金額は原価です。積送品の当期増加30,000円は、積送品向けに別途取得して積送品勘定に計上したもので、一般販売の仕入100,000円には含まれていません。諸掛や評価損はないものとします。
一般販売 期首手許商品 10,000 + 当期仕入100,000 = 一般販売の原価90,000 + 期末手許商品20,000 委託販売 期首積送品 2,000 + 当期増加 30,000 = 委託販売の原価24,000 + 期末積送品 8,000
委託販売の売上は40,000円、原価率は60%と与えられていれば、販売原価は40,000×60%=24,000円。期末積送品は2,000+30,000−24,000=8,000円です。
合計売上原価 = 90,000 + 24,000 = 114,000 合計期末在庫 = 20,000 + 8,000 = 28,000 全体の照合 期首在庫12,000 + 当期取得130,000 = 売上原価114,000 + 期末在庫28,000
BOXを分ける目的は、計算を複雑にすることではありません。同じ原価を一般販売と委託販売の両方に入れないためです。
4. 期末一括法とその都度法では、試算表の残高が違う
上の取引を、販売原価を「仕入」へ振り替える手許商品区分法の設定で比べます。経済的な売上原価と期末在庫は同じでも、期末整理前の試算表は違います。
| 項目 | 期末一括法 | その都度法 |
|---|---|---|
| 整理前の積送品 | 32,000 | 8,000 |
| 整理前の仕入 | 100,000 | 124,000 |
| 積送品販売原価24,000 | まだ振替前 | すでに仕入へ振替済み |
期末一括法:積送品から販売原価を振り替える
(借)仕入 24,000
(貸)積送品 24,000
振替後、積送品は8,000円、仕入は124,000円になります。一般商品の期首・期末の整理も行えば、仕入勘定に集約される売上原価は10,000+124,000−20,000=114,000円です。
その都度法:仕入に含まれる販売原価を区別する
整理前の仕入124,000円には、委託販売の原価24,000円がすでに入っています。一般販売だけのBOXを作るなら、124,000−24,000=100,000円を一般仕入として使います。
ただし、合計売上原価を仕入勘定から直接計算するなら、24,000円は含めたままで構いません。一般BOXから区別した24,000円は、委託BOXで一度だけ加える。控除したまま忘れるのも、振替済みなのにもう一度加えるのも誤りです。
また、販売原価を直接「売上原価」へ振り替える方式なら、この試算表の姿にはなりません。「その都度法だから仕入から必ず引く」と丸暗記せず、どの勘定へ振り替えているかを見ます。
5. 未着品も、取得と引取りを別の動きにする
別の例として、自社に帰属する未着商品20,000円を掛けで取得し、そのうち12,000円を引き取ったとします。三分法で、引取時に仕入へ振り替える設定です。
取得時
(借)未着品 20,000
(貸)買掛金 20,000
引取時
(借)仕入 12,000
(貸)未着品 12,000
期末未着品 = 20,000 − 12,000 = 8,000
取得した時点で20,000円を仕入に入れ、引取時にさらに12,000円を仕入に入れると二重計上です。使用する記帳方法に従って、取得時と引取時を分けます。
引取額12,000円は、一般販売の仕入に移った原価です。引き取っただけで売上原価が確定するわけではなく、その後の一般販売や期末手許商品の計算に含めます。未着のまま販売する資料があれば、その販売分は未着品のBOXから別途減らします。
なお、運送中の商品がすべて自社の未着品になるわけではありません。取引条件から、商品の支配や帰属が自社へ移っているかを確認します。
6. 試験前のチェックリスト
- 委託者と受託者のどちらの帳簿か。
- 売上通知の売上総額と送金額を分けたか。
- 積送しただけの商品を売上にしていないか。
- 期末整理前の積送品は、販売原価の振替前か振替後か。
- 一般販売の仕入に積送品や未着品の振替額が含まれるか。
- 各BOXの期末残高と、合計売上原価を照合したか。
解く順番は、立場の確認 → 商品区分 → 記帳方法 → 二つのBOX → 売上原価と期末在庫の合計。試算表に線を引いて、振替済みの原価を見えるようにしておくと、重複を防げます。
参考:企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準の適用指針(2020年改正)」第75項(委託販売契約)。2022年度適用の出題区分を土台に、学習メモの手許商品区分法を整理しています。