満期保有目的債券の償却原価法では、額面、クーポン、実効利子率、帳簿価額の四つが登場します。特に混ぜやすいのが、「現金で受け取る利息」と「損益計算書に計上する有価証券利息」です。
学習メモでは、先に実効利息を計算し、クーポンとの差を帳簿価額へ加減することをポイントにしていました。この記事では、定額法・利息法の違いから、利払日と決算日のズレ、期中売却まで整理します。
0. 先に押さえる結論
- 満期保有目的債券の取得差額が金利調整差額なら、償却原価法を適用する。
- 利息法では「期首の帳簿価額×期間に対応する実効利子率」が有価証券利息。
- クーポンは「額面×約定利率」で求める。
- 帳簿価額の増減は「有価証券利息−その期間のクーポン計上額」。
- 利払日以外の決算では、未収クーポンと償却額を別々に計算する。
- 期中売却では、売却日までの償却を済ませ、経過利息と売却対価を分ける。
以下は債券を保有する側の個別会計です。自社が発行した社債という負債の処理とは、科目と貸借の向きが違います。取得差額が信用リスクなど別の要因による場合、単に額面との差があるだけで金利調整として償却するとは限りません。
1. 三つの数字を別々に書く
クーポン(約定利息) = 額面 × 約定利率 × 対象期間 有価証券利息(利息法) = 期間開始時の帳簿価額 × 対応する実効利子率 償却額 = 有価証券利息 − その期間のクーポン計上額
利払日ならクーポンを現金で受け取り、利払前の決算なら経過分を未収収益等で計上します。利息法で求めた有価証券利息に、クーポンをさらに足すわけではありません。
額面より安く取得した割引取得では、通常、償却により帳簿価額が増えて額面へ近づきます。額面より高い打歩取得では、通常、帳簿価額が減って額面へ近づきます。最後にこの方向でも検算します。
2. 利息法の計算例:額面121,000円、取得価額104,200円
次の独自の例を使います。金額は円、税金・手数料・減損はありません。
- 満期まで2年の債券を利息期間の開始時に104,200円で取得した。
- 額面は121,000円。年末に額面の2%のクーポンを受け取る。
- 実効利子率は年10%。利息法を適用する。
- 取得差額16,800円は金利調整差額であり、満期保有目的の条件を満たす。
年間クーポン = 121,000 × 2% = 2,420 取得価額の照合 2,420 ÷ 1.1 +(121,000+2,420)÷ 1.1² = 2,200 + 102,000 = 104,200
1年目
有価証券利息 = 104,200 × 10% = 10,420 償却額 = 10,420 − 2,420 = 8,000 期末帳簿価額 = 104,200 + 8,000 = 112,200
(借)現金預金 2,420
(借)投資有価証券 8,000
(貸)有価証券利息 10,420
投資有価証券の科目は問題の指定に合わせます。借方に入る現金2,420円と、帳簿価額の増加8,000円の合計が、有価証券利息10,420円です。
2年目
有価証券利息 = 112,200 × 10% = 11,220 償却額 = 11,220 − 2,420 = 8,800 満期直前の帳簿価額 = 112,200 + 8,800 = 121,000
2年目は取得価額104,200円を再び使わず、償却済みの112,200円を使います。元本の償還時は、現金預金121,000/投資有価証券121,000です。
| 年 | 期首簿価 | 有価証券利息 | クーポン | 償却額 | 期末簿価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 104,200 | 10,420 | 2,420 | 8,000 | 112,200 |
| 2年目 | 112,200 | 11,220 | 2,420 | 8,800 | 121,000 |
償却合計 = 8,000 + 8,800 = 16,800
= 額面121,000 − 取得価額104,200
有価証券利息合計 = 10,420 + 11,220 = 21,640
= クーポン合計4,840 + 償却合計16,800
3. 定額法は、金利調整差額を期間で割る
原則は利息法ですが、継続適用を条件に簡便法の定額法を採用できる取扱いがあります。試験では指定された方法で計算します。
同じ債券を定額法で計算するなら、取得差額16,800円を取得から満期までの2年間へ均等に配分します。
年間償却額 =(121,000 − 104,200)÷ 2年 = 8,400
年間有価証券利息 = クーポン2,420 + 償却8,400
= 10,820
1年目末簿価 = 104,200 + 8,400 = 112,600
2年目末簿価 = 112,600 + 8,400 = 121,000
利息法とは各年の配分が違いますが、2年間の利息合計は10,820×2=21,640円で一致します。定額法の分母は、原則として取得日・受渡日から償還日までの期間です。発行から取得まで経過している場合、発行時の総年数で割らないようにします。
4. 半年ごとの利払いと、3月決算の例
次は別の債券です。7月1日に額面100,000円の債券を98,000円で取得し、取得差額は金利調整差額とします。クーポンは年2%、利払日は6月末と12月末、決算日は3月末です。
利息法を適用し、問題の指定として、年3%の実効利子率を半年・端数期間へ月割りするものとします。有価証券利息は各計算時に円未満四捨五入します。年率から期間利率への換算は問題によって異なるため、この月割りを無条件に一般化しません。
12月末の利払い
半年クーポン = 100,000 × 2% × 6/12 = 1,000 半年の有価証券利息 = 98,000 × 3% × 6/12 = 1,470 償却額 = 1,470 − 1,000 = 470 12月末簿価 = 98,000 + 470 = 98,470
(借)現金預金 1,000
(借)投資有価証券 470
(貸)有価証券利息 1,470
3月末は、クーポンの見越しと償却を両方行う
12月末 3月末決算 6月末利払い
|-------------|---------------|
経過3か月 残り3か月
未収クーポン = 100,000 × 2% × 3/12 = 500
有価証券利息 = 98,470 × 3% × 3/12
= 738.525 → 四捨五入739
償却額 = 739 − 500 = 239
(借)未収収益 500
(借)投資有価証券 239
(貸)有価証券利息 739
3月末の債券簿価は98,470+239=98,709円、未収収益は500円。7月の取得から3月までの有価証券利息は、12月の1,470+3月の739=2,209円です。
クーポン見越額500円だけを計上すると、償却239円が抜けます。逆に739円すべてを債券へ足すと、クーポン分まで帳簿価額に入れています。
5. 未収クーポンを、債券本体に足さない
上の例の貸借対照表では、投資有価証券98,709円と未収収益500円を区別します。500円を投資有価証券へ加えて99,209円にするのは、この記帳方法では誤りです。
その後の利払日には、未収収益として計上済みの部分を回収します。受取クーポンの全額を新しい有価証券利息にすると、前期の見越分を二重に収益にしています。再振替をするかどうかも含め、問題の指示と処理済みの内容を確認します。
なお、実効利子率が半年の期間利率として与えられた場合、さらに6/12を掛けません。年率を複利換算する設定なら、単純に年率÷2とも限りません。どの期間に対応する率なのかを最初に書いておくと防げます。
6. 期中売却は、売却日まで償却してから比較する
満期保有目的は、自由に途中売却する前提の区分ではありません。以下は、発行体の信用状態の著しい悪化など、例外的な売却が認められる事情を問題が指定した設定です。分類への影響は問題の条件に従います。
計算を追いやすくするため、別の定額法の例を使います。7月1日に、満期まで60か月・額面100,000円・取得価額98,000円の債券を取得。年2%のクーポンは6月末・12月末払いです。翌3月末に全部を売却し、経過利息を除く売却価格は99,000円、経過利息500円を別に受け取ります。税金・手数料はありません。
① 売却日までの償却原価を求める
取得から売却まで9か月の償却額 =(100,000 − 98,000)× 9/60 = 300 売却日簿価 = 98,000 + 300 = 98,300
12月末までの6か月分200円が償却済みなら、3月の売却までに追加するのは100円です。取得からの累計300円を、そのまま再度足しません。
(借)投資有価証券 100
(貸)有価証券利息 100
② 売却価格と経過利息を分ける
経過利息 = 100,000 × 2% × 3/12 = 500 入金総額 = 売却価格99,000 + 経過利息500 = 99,500 売却益 = 売却価格99,000 − 償却原価98,300 = 700
(借)現金預金 99,500
(貸)投資有価証券 98,300
(貸)有価証券売却益 700
(貸)有価証券利息 500
この仕訳は、売却時点の未収クーポン500円をまだ計上していない設定です。先に未収収益を計上済みなら、対応する部分は未収収益の回収にします。
入金総額99,500円をすべて売却対価として比較すると、売却益を1,200円と計算してしまいます。500円は保有期間に対応するクーポンであり、売却益とは分けます。
7. 一部売却・打歩取得も、同じ式で考える
同一条件の債券の一部を売却する場合は、まず売却日までの償却原価を求め、そのうち売却部分の原価を計算します。取得時期や条件が違う複数のロットがあるなら、問題で指定された売却原価の算定方法を確認します。利息法を採用している満期保有目的債券の売却原価は、実務指針第71項により先入先出法で算定します。
打歩取得で、計算済みの有価証券利息が2,000円、当期クーポンが3,000円なら、償却額は2,000−3,000=−1,000円。現金3,000を借方にし、有価証券利息2,000と投資有価証券1,000を貸方にする関係です。
「償却だから必ず資産を増やす」とは覚えず、額面へ近づく向きを確認します。外貨建債券では、この原価の動きに換算処理が加わるため、償却額とクーポンを分けておくことがさらに重要になります。
8. 試験前のチェックリスト
- 取得差額は金利調整として償却する設定か。
- 利息法か定額法か。
- クーポンは額面、実効利息は期間開始時の簿価に掛けたか。
- クーポンを実効利息に重ねて加えていないか。
- 年率・半年利率・月割り・端数処理の指示を確認したか。
- 決算日までの未収クーポンと償却額を両方計上したか。
- 売却価格は経過利息込みか、別か。
- 償却済み額と未収計上済み額を二重に処理していないか。
解く順番は、期間の図 → クーポン → 実効利息または定額償却 → 簿価 → 未収額 → 売却・償還。各期間の「現金」「未収」「簿価の増減」を横に並べると、利息の全体を追いやすくなります。
参考:企業会計基準委員会「金融商品会計に関する実務指針」第69〜71項・第83項。2022年度適用の出題区分を土台に、学習メモの利息計算と期間配分を整理しています。
動画でも確認したい方は、こちらの「債券の償却原価法の解説動画」をご覧ください。