この記事は、簿記1級の商品売買を原価BOX→棚卸減耗→商品評価損→売上原価の順に整理するためのメモです。三分法と売上原価対立法で前T/Bの意味がどう違うか、仕入戻し・仕入割戻をどこに入れるかもまとめます。
自分の学習メモで繰り返し注意していたのは、「まず帳簿棚卸高でBOXを作る」「数量の減少と単価の下落を分ける」という点でした。実地棚卸高をいきなりBOXに入れると、減耗分を売れた商品の原価と混同しやすくなります。
0. 原価BOXは、商品原価の行き先を整理する図
基本の関係は、次のとおりです。
期首商品+当期純仕入 =販売した商品の原価+期末の帳簿商品 したがって 販売した商品の原価 =期首商品+当期純仕入-期末帳簿棚卸高
この段階では、減耗や評価損を別に計算するため、期末商品は減耗・評価切下げ前の帳簿棚卸高で置きます。「売上原価」と呼んでいる数字が、損失算入前か算入後かも、下書きでは区別します。
| 商品原価の入り口 | 商品原価の行き先 |
|---|---|
| 期首商品 | 販売分の原価 |
| 当期純仕入 | 期末帳簿商品 ↓ 減耗・評価損を区別 最終的なB/S商品残高 |
| 合計 | 同じ合計になる |
売上総利益率が与えられている場合も、利益率の分母が売上高か原価かを確認します。売上高を分母とする利益率が25%なら、販売分の原価率は75%。売上高×75%で販売分の原価を求めます。
1. 三分法か、売上原価対立法かを先に確認する
三分法:前T/Bの繰越商品は、通常は期首商品
三分法では、購入時に仕入、販売時に売上を記録し、決算で期首商品と期末商品を仕入勘定に振り替えて売上原価を求めます。決算整理前の繰越商品は、通常、期首から繰り越した残高です。
決算での基本の振替 (借)仕入 期首商品額 (貸)繰越商品 期首商品額 (借)繰越商品 期末商品額 (貸)仕入 期末商品額
問題の処理状況によっては、すでに一部の整理が反映されています。科目名だけで判断せず、「決算整理前」「未処理」「処理済み」の条件も確認します。
売上原価対立法:販売時に商品原価を振り替えている
売上原価対立法では、購入した商品を商品勘定に記録し、販売時に売上の仕訳と原価の仕訳を行います。
掛販売の例(売価8,000円、原価5,000円) (借)売掛金 8,000 /(貸)売上 8,000 (借)売上原価5,000 /(貸)商品 5,000
期中の取引が正しく記録されていれば、前T/Bの商品残高は期末の帳簿商品を示します。三分法のように、期首商品をもう一度売上原価へ足さないようにします。
元メモの画像には、売上原価対立法では決算整理が不要という説明もありました。ただし、これは販売原価と帳簿在庫が期中に記録されるという意味です。棚卸減耗・商品評価損・未処理取引の修正まで不要になるわけではありません。
2. 棚卸減耗と評価損を、一つの例で計算する
以下は三分法の例です。金額は円、税金は考慮しません。仕入戻し・仕入割戻は未処理で、どちらも買掛金から控除するものとします。棚卸減耗損・商品評価損は、いずれも売上原価に算入する指示があるものとします。
- 期首商品:20,000円
- 当期総仕入:100,000円
- 仕入戻し:5,000円、仕入割戻:3,000円
- 期末帳簿数量:300個、実地数量:280個
- 期末商品の取得原価:1個100円
- 期末商品の正味売却価額:1個90円
① 純仕入と、損失算入前の販売原価
当期純仕入 =100,000-5,000-3,000=92,000円 期末帳簿棚卸高 =300個×100円=30,000円 損失算入前の販売原価 =20,000+92,000-30,000=82,000円
② 棚卸減耗損:足りない数量を、原価で評価する
減耗数量=帳簿300個-実地280個=20個 棚卸減耗損=20個×取得原価100円=2,000円
ここで90円を掛けると、減耗の金額に評価切下げの影響が混ざります。この例では、数量がなくなった部分と、残っている商品の単価が下がった部分を別々に計算します。
③ 商品評価損:実際に残っている数量に、単価差を掛ける
1個当たりの評価切下げ=100-90=10円 商品評価損=実地280個×10円=2,800円 B/Sの商品残高=280個×90円=25,200円
評価するのは、実際に残っている280個です。すでになくなった20個にまで評価損を計上すると、損失を重ねて計算してしまいます。
正味売却価額は、単なる売価とは限りません。見積追加製造原価や見積販売直接経費を控除する条件がある場合は、それを反映します。通常の販売目的の棚卸資産は、正味売却価額が取得原価より下落した場合に切り下げます。参考:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」。
④ 売上原価への算入と、検算
損失算入後の売上原価 =販売原価82,000+減耗2,000+評価損2,800 =86,800円 商品原価全体の検算 期首20,000+純仕入92,000=112,000 売上原価86,800+B/S商品25,200=112,000
売上原価86,800円の中には、損失4,800円が含まれています。P/Lでその損失をもう一度売上原価に加えると、二重計上になります。
3. 仕訳も、BOXと同じ順番にする
先ほどの例で、三分法の仕入勘定を売上原価へ整理する仕訳は、次のようにつながります。いずれも未処理という前提です。
① 仕入戻し・仕入割戻 (借)買掛金 8,000 /(貸)仕入 8,000 ② 期首商品を振り替える (借)仕入 20,000 /(貸)繰越商品20,000 ③ 期末帳簿商品を振り替える (借)繰越商品30,000 /(貸)仕入30,000 ④ 減耗と評価切下げ (借)棚卸減耗損2,000 /(貸)繰越商品2,000 (借)商品評価損2,800 /(貸)繰越商品2,800 ⑤ 損失を売上原価へ算入する (借)仕入2,000 /(貸)棚卸減耗損2,000 (借)仕入2,800 /(貸)商品評価損2,800
仕入勘定の整理後残高は86,800円、繰越商品の残高は25,200円になります。仕訳方式や解答科目が指定されている場合は、その指定に合わせます。
売上原価対立法なら、商品と売上原価がすでに期中に記録されているので、三分法の②③をそのまま追加しません。必要な減耗・評価損等の整理を、商品勘定や売上原価勘定に反映します。
4. 仕入割戻と売上割戻は、別の場所を調整する
仕入戻し・仕入割戻:商品原価の入り口を減らす
仕入戻しは仕入先への返品、仕入割戻は取引数量などの条件による購入代価の減額です。BOXでは純仕入から控除します。
未処理なら、買掛金との関係などに応じて仕訳を作ります。前T/Bの仕入がすでに控除後なら、もう一度引きません。売価還元法で売価情報も調整する必要がある場合は、原価の控除だけでは足りないことがあるため、資料を確認します。
売上割戻:売上高を減らす
売上割戻は、販売した側の収益を減らす項目です。元メモでは、売上割戻勘定の残高と、未処理の追加額を合算し、最終的に売上高から控除する点が注意事項になっていました。
例えば、売上高150,000円に対し、売上割戻の処理済み額が3,000円、追加すべき額が1,000円なら、最終的な売上高は150,000-3,000-1,000=146,000円です。ただし、T/Bの売上がすでに割戻控除後なら、処理済み分を再度引きません。
また、売上割戻を見積もる変動対価の問題では、返金負債などの処理が関係します。単純に買掛金・仕入の処理と同じものとして扱わず、売上側の資料を別に整理します。
5. 解答前のチェックリスト
- □ 三分法か、売上原価対立法か。前T/Bの商品は何の残高か。
- □ 仕入戻し・仕入割戻は未処理か、処理済みか。
- □ 原価BOXの期末商品に、まず帳簿棚卸高を置いたか。
- □ 棚卸減耗損は数量差×取得原価で計算したか。
- □ 商品評価損の数量は、実地数量になっているか。
- □ B/Sの商品残高は、減耗と評価切下げ後の金額か。
- □ 損失の表示・原価算入は問題の指示と解答様式に合っているか。
- □ 原価率などの端数処理は、指定された段階で行ったか。
原価BOXでは「入ってきた原価=売上原価などの費用+残っている商品」のつながりを確認します。減耗と評価損を分けてから表示へ持っていけば、図のどこに数字を書くかを丸暗記しなくても、計算の理由を追えます。